急性ストレス障害（ASD）とは
「急性ストレス障害」とは、事故・事件、災害・戦争などに巻き込まれたり、悲惨な状況を見ることで生じた強烈なストレスによって、さまざまな精神症状・身体症状が現れる一時的な障害です。
ストレスの原因となるできごとを経験した・見た直後～数日以内に発症し、2日～1カ月程度で治まります。
なお、この状態が長期にわたる場合には「心的外傷後ストレス障害」が疑われます。
症状
以下のような経過を辿りながら、不安・緊張・過敏・焦燥感・イライラ・集中力の低下といった精神症状、動悸・呼吸困難・めまい・首や肩のこり・ふるえ・不眠といった身体症状が現れます。
再体験
（フラッシュバック）
まず、そのストレスを感じた当時の記憶が蘇ります。
その光景、感じたこと、怒り・悲しみ、あるいは羞恥心などの感情を再体験します。できごとに関係した夢を見てうなされる、飛び起きる、寝汗をかくということもあります。
回避行動・知覚の鈍り
原因となるできごとに関連するものごと、状況を回避する心が働きます。
その場所に行ったり、ニュースなどで映像を見たりすると、強い恐怖や苦痛を感じます。
また、知覚が鈍くなることもあります。
過敏な反応
過敏になり、精神症状・身体症状が起こりやすい状態が続きます。
原因
事故・事件、災害・戦争など、命の危険があるできごとに巻き込まれたり、悲惨な状況を見たりする時に発生する強烈な心理的ストレスが原因となります。
診断
医師の問診、診察を行い、診断します。症状だけでなく、生活環境、日常生活への影響など、可能な範囲でお伺いします。
治し方
薬物療法
副作用の少ない抗うつ薬であるSSRI（選択的セロトニン再取り込み阻害薬）の処方が中心となります。
抗精神病薬、抗てんかん薬を使用することもあります。
精神療法
認知行動療法が中心になります。原因となるできごとや症状に対する認知を見つめ直し、思考・感情のパターンを整理することで、ストレスの軽減を目指します。
また経過を見ながら、回避していた場所に実際に行き、こころと身体を慣れさせる暴露療法、グループ療法が有効になることもあります。
心的外傷後ストレス障害（PTSD）
急性ストレス障害と同じように、事故・事件、災害・戦争などに巻き込まれたり、悲惨な状況を見たことに伴う強烈なストレスが原因となります。そのできごとの記憶がいつまでも残り、思い出すたびにさまざまな精神症状・身体症状が現れます。
通常、体験の数週間後から症状が現れますが、何年も経過してから突然発症するというケースもあります。
症状
記憶が蘇るたび、不安・緊張・過敏・焦燥感・イライラ・集中力の低下といった精神症状、動悸・呼吸困難・めまい・頭痛・ふるえ・不眠といった身体症状が現れます。
突然記憶が蘇る
ある時、突然当時の記憶が蘇り、恐怖、苦痛、悲しみ、無力感など、ひと言では言い表せない感情におそわれます。
神経が過敏になる
発症後は、特別に記憶を思い出しているわけではない時間においても、神経が以前より過敏になっています。ちょっとしたことでイライラしたり、驚いたり、眠れないといった症状が見られます。
記憶が蘇る状況の回避
記憶と症状が結び付いていることから、記憶と関連する場所、関連する状況を回避しようという気持ちが働きます。そのことで仕事や勉強、家事などに支障が出ることもあります。
感覚の麻痺
辛い症状から心身を守るため、感覚や感情が鈍くなることがあります。防衛本能が働いているということですが、これによってこれまで大切にしていた家族、友人に愛情や親しみを感じられなくなるということがあります。
ずっと症状が続く
1カ月以上、こうした状態が続きます。
多くの心的外傷後ストレス障害は3カ月程度で軽快しますが、中には1年以上続くケースが見られます。
原因
急性ストレス障害と同じように、事故・事件、災害・戦争など、命の危険があるできごとに巻き込まれたり、悲惨な状況を見たりした時に感じる強烈な心理的ストレスが原因となります。
診断
問診、診察を行った上で、診断します。症状に加え、生活環境、日常生活への影響など、可能な範囲でお話をお聞かせください。
治し方
薬物療法
症状に応じて、SSRIなどの抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬、睡眠薬などのお薬を処方します。
精神療法
認知行動療法の1つ「持続エクスポージャー療法」は、PTSDに有効です。ストレスの原因となった場面を意図的にイメージしたり、その場所に実際に足を運んだりすることで、認知の歪みを改善します。なおその場合は、治療者が同伴し、十分な安全と安心を確保する必要があります。
その他、思考・こだわりを見直す「認知療法」、PTSD患者が数名で自分の悩みを語らう「グループ療法」などが有効になることもあります。
急性ストレス障害と
外傷後ストレス障害の違い
急性ストレス障害と外傷後ストレス障害について、表にまとめましたのでご覧ください。
| 急性ストレス障害 | 外傷後ストレス障害 | |
|---|---|---|
| 発症時期 | 直後～数日以内 | 数週間後～3カ月以内（数年後に発症することも） |
| 経過 | 2日～1カ月以内 | 3カ月程度（1年以上続くことも） |
| ストレスの性質 | 強烈なストレス | 強烈なストレス |
| 症状 | ・解離性症状 ・再体験 ・回避行動 ・過敏な反応 ・強い不安 など |
・再体験 ・回避行動 ・過敏な反応 ・反応の麻痺 |