摂食障害とは
摂食障害とは、「食べる」ことに関わる障害の総称です。
「神経性やせ症(拒食症)」「神経性過食症」、「過食性障害(過食症)」、「回避制限性食物摂取症」などがあります。
神経性やせ症(拒食症)
極端な食事制限、そしてやせが認められます。また、ご自身の状態を異常であると気づいていないという特徴があります。そのため、まわりが「痩せすぎだ」と指摘したり、説明しても、なかなか認めてくれません。
必要以上にやせているのに、それでも自分では太っていると感じ、食べ物をまったく・ほとんど摂りません。一方で、その反動によって過食になるというケースも見られます。過食に走った場合には、嘔吐・下剤乱用などにより体重の増加を防ごうとします(神経性過食症)。
症状
やせていても活発であることが多くなります。ただ、カロリー・栄養が不足しているため、以下のような症状が見られます。
- 小食、食欲不振(時に過食)
- やせ
- 疲労感
- 寒がり
- 無月経、不妊
- 睡眠障害
- 筋力低下
- 集中力低下
- 低血圧、低血糖
- 低体温
- 便秘
- むくみ
- 頭髪の脱毛
- 背中の濃い産毛
- イライラ、こだわりが強くなる
- うつ
- 人との交流を避ける
- 性的関心の低下
特に、低血圧、低体温、心拍数低下、頭髪の脱毛、無月経、うつなどの危険な症状見られる場合には、すぐに治療が必要です。
神経性過食症
神経性過食症とは、大量の食べ物を一気に食べることを繰り返す一方で、体重増加を避けるために嘔吐・下剤の乱用などをしてしまう病気です。神経性やせ症と同じように、本人は異常な状態であることを自覚していません。
過食と嘔吐・下剤の乱用のバランスによって、太っている場合もあれば、痩せている場合・体重は正常である場合もあります。
症状
主に、以下のような症状が見られます。
過食については、週に1回でもあれば、治療が必要な状態と言えます。
- 大量の食べ物を、口に詰め込むようにして食べる
- 食べ過ぎてはいけないと分かっていても食べることをやめられない
- 体重はさまざま
- 慢性的な疲労感、倦怠感
- むちゃ食いの後の嘔吐、下剤乱用
- 食べてしまったことへの自己嫌悪
- 嘔吐の際の胃酸によって歯が溶ける
- 気分の浮き沈み
- 気力、意欲の低下
- 不整脈
- (上記のような症状から)職場、学校に行けない
退職せざるを得なかったり、食事代がかさむことから、経済的な困窮に陥るケースもあります。
過食性障害(過食症)
自分ではコントロールできないむちゃ食いを繰り返す病気です。大量の食べ物を、短時間で一気に口に詰め込みます。
神経性過食とは異なり、嘔吐や下剤、あるいは極端な運動などによって体重増加を防ぐ行動は見られません。そのため、太っていることがほとんどです。
症状
主に、以下のような症状が見られます。
- 大量の食べ物を、口に詰め込むようにして食べる
- 食欲亢進、気分が悪くなるまで食べる
- 空腹を感じていないのに食べてしまう
- 食事の後の自己嫌悪、後悔
- 過食を恥ずかしく思い、一人で食事を摂ろうとする
- (上記のような症状から)職場、学校に行けない
神経性過食症と同じように、退職に追い込まれたり、食事代がかさんだりして、経済的な困窮に陥るケースがあります。
回避制限性食物摂取症
回避制限性食物摂取症とは、食事をしない、または制限することで、必要なカロリーや栄養が摂れず、急激な体重減少、栄養不足、サプリメントなどへの依存、生活への支障が生じている状態です。
食事を制限する神経性やせ症とは異なり、体重や体型についての歪んだ認知はありません。つまり自分は痩せ過ぎであり、健康のためには体重を増やした方がいいということが分かっています。
発症までの経緯はさまざまです。もともと小食で食事に関心がない人が特に理由なく食べる量を減らしていくパターン、味・におい・食感に過敏で限られたものしか食べられないパターン、食べ過ぎた後の嘔吐や喉に詰まらせた経験から食事に恐怖心を抱いてしまうパターンなどがあります。
症状
主に、以下のような症状が見られます。
- 小食
- 体重減少、やせ
- 極端に偏った食事
- サプリメントへの依存
- 腹痛、吐き気
- 疲労感
- 低血圧、低血糖
- 低体温
- 無月経、不妊
- 睡眠障害
- 筋力低下
- 集中力低下
- 便秘
- むくみ
自分の状態が良くないことは理解しているため、サプリメントなどを使って栄養を補おうとすることがよくあります。
摂食障害の治し方
摂食障害は、こころの病気です。しかし、急激な体重減少、栄養不足、偏った食事、嘔吐・下剤の乱用などによって、身体にもさまざまな悪影響が及んでいます。
薬物療法や心理士によるカウンセリングによって、こころだけでなく、身体の健康も取り戻すことが大切になります。
薬物療法
その患者様の症状に合わせて、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬などを処方します。ある薬を飲めば治るという病気ではなく、一人一人に合わせて薬を選択する必要があります。
症状が改善してきたからと、ご自身の判断で内服をやめたり、量を減らしたりといったことはしないでください。医師の指示を守って、服用を継続していきます。
心理士による
カウンセリング
患者様の摂食障害に影響を与えた人(身近な人、芸能人など)との関係性に着目し、歪んだ認知を改善する認知行動療法などを行います。痩せすぎであること、食べ過ぎであること、嘔吐・下剤乱用が異常であることを改めて認識することで、体重の適正化、症状や問題行動(嘔吐・下剤の乱用)の改善が期待できます。
また、何らかのストレスからの逃げ道として摂食障害を発症することもあるため、そのストレスを探り、今後の付き合い方を一緒に考えていくことも大切になります。