双極性障害
(躁うつ病)とは
双極性障害とは「うつ状態」と「躁状態」という、対極にある状態を繰り返す病気です。このため「躁うつ病」とも呼ばれます。
双極性障害は、躁状態の現れ方によって双極Ⅰ型障害と、双極Ⅱ型障害に分けられます。
双極Ⅰ型障害
躁状態が、職場・学校・家庭などにおいて大変な事態を招き、入院が必要になるほど強く現れている双極性障害です。
双極Ⅱ型障害
躁状態が、職場・学校・家庭などにおいて問題視されない程度に現れている双極性障害です。このような躁状態のことを、軽躁状態とも呼びます。
「最近、バリバリ働いているな」というように、以前の状態やうつ状態の時との違いを認識されていても、病的なものとは思われず、受診が遅れてしまうことがあるため注意が必要です。
うつ病との違い
うつ状態だけが現れる病気が「うつ病」、うつ状態と躁状態を繰り返す病気が「双極性障害(躁うつ病)」となります。
この二つはまったく違った病気であり、使用する治療薬も異なります。
双極性障害の症状
双極性障害では、躁状態(または軽躁状態)とうつ状態を繰り返します。
躁状態は1週間以上、軽躁状態は数日間、うつ状態は2週間以上続くというのが一般的です。
躁状態
基本症状
- 気分が清々しい
- 絶え間なくしゃべる
- 1日中活発に動き、疲れない
- 些細なことに敏感になる、怒りっぽい
- 人間関係のトラブルを起こしがち
周辺症状
- 不要なものを購入してしまう
- 買い物やギャンブルに大金を使う
- 人の話をちゃんと聞けない
- 睡眠をとらなくても疲れを感じない
- 1つのことに集中できない、移り気
- 根拠のない自信、全能感
- 性欲の亢進、簡単に関係を持ってしまう
- 知らない人にしゃべりかける、交流を持とうとする
- 病気であることを自分で認識できない
- 頻尿、残尿感
うつ状態
精神症状
- 気分の落ち込み、憂うつ
- 興味、関心、意欲の低下
- 集中力、注意力の低下
- 不安
- 人生に絶望する、死にたくなる
- 自責の念
- 自分ががんなどの重大な病気だと思い込む
- 朝は辛いが、夕方になると多少楽になる
身体症状
- 不眠、過眠
- 過食、小食
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 倦怠感、疲労感
- 下痢、便秘
- 発汗
- しびれ、痛み
- 妄想
双極性障害のチェック方法
以下の項目のうち、3つ以上当てはまる場合には、双極性障害を疑い、受診されることをおすすめします。また3つ未満であっても、何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
- ほぼ1日中、気分の高揚・爽快感が続くことがあり、そういった日が4日以上続く
- 怒りっぽくなる一方で、目標に向かって活発に活動する
- ほとんど寝ない、または徹夜であっても次の日も元気に活動できる
- 誰かとしゃべりたい欲求が強くなり、友人、知らない人に話しかけ、しゃべり続けてしまう
- 新しいアイデアが次々と浮かんできて、自分なら何でもできそうな気がする
- 1つのことに集中できず、すぐに他のことに気持ちが映ってしまう
- 仕事、学業などの目標に向けて頑張りたい気持ちが強く、じっとしていられない
- あまり必要のないものにお金をたくさん使ってしまう
- やりたいと思ったことへの衝動を抑えられない
双極性障害の原因
双極性障害の原因については、まだはっきりしたことが分かっていません。
しかし、遺伝、周産期の胎児の異常、妊娠中のインフルエンザ感染、母親の喫煙などが影響していると言われています。うつ病とは異なり、ストレスの影響は限定的なものに留まると考えられます。
なりやすい人・性格
はっきりとした因果関係は証明されていませんが、以下のような人は、そうでない人と比べると双極性障害になりやすいと言われています。
- 肥満体型の人
- 循環性性格(社交的・善良・親切・情に厚い・ユーモアがある・活発・性急・物静か・穏やか・柔和)の人
- 転職、昇進、退職、転居、近親者の病気・死亡を経験したばかりの人
- 異性関係の問題などがある人
- 妊娠、出産を迎えた人
- 何らかの身体の病気がある人
双極性障害の治療方法
薬物療法
気分の浮き沈みを抑える気分調整薬、非定型抗精神病薬などを使用します。
また躁状態、うつ状態それぞれに対して、気分の高揚を抑える薬、抗うつ薬などを使用することもあります。
当院では、薬に頼り過ぎない治療を行います。お薬の副作用が心配という方も、安心してご相談ください。
磁気刺激療法(TMS)
うつ状態が長引く場合に有効となる、最先端の治療です。磁気で脳の特定の部位の活性化、血流の改善を図り、低下してしまった機能の回復を目指します。
治療期間は3~6週間で、麻酔不要です。多少のピリピリとした刺激があります。1回あたり3~20分、楽な姿勢で頭部に磁気で刺激を与えます。
心理社会的治療
心理社会的治療とは、病気を理解すること、病気との向き合い方を考え、知ることで、症状の改善を目指す精神療法の1つです。
心理教育
医師の指導のもと、双極性障害という病気について、ご自身の理解を深めていきます。悪化につながりやすいきっかけ、ストレスを予測し、それらの回避法や対処法を学びます。
家族療法
双極性障害に対する家族の理解を深め、ご家庭などで双極性障害に正しく向き合います。薬の内服、仕事・学業などとの距離感の調整などに、家族の協力を得ながら取り組むことで、治療を円滑に進めます。
対人関係・社会リズム
療法
対人関係を原因としたストレス、病気になってしまったというストレスを軽減させる「対人関係療法」、社会生活のリズムを整える「社会リズム療法」を組み合わせます。
双極性障害の悪化の予防、回復の促進といった効果が期待できます。